研究課題
本研究の目的は、高透過速度と高分離能を有する親水性シリカライトナノクリスタル積層膜の合成と、それによる高度分離プロセスの開発である。昨年度に作製に成功した親水性シリカライトナノクリスタル積層膜を用い、水-アセトン系、および水-エタノール系からの水の選択分離実験を行った。さらに、高度分離プロセスとして、蒸留塔にゼオライト分離膜を併せた複合分離プロセスについてシミュレーターにより経済評価を実施した。親水性シリカライト膜では、水分子はゼオライト結晶表面上のシラノール基と水素結合を形成して透過する。従って、ナノクリスタル粒子間空隙の制御が非常に重要になると考えられた。この点に着目し、ナノクリスタル分離膜の高性能化を検討した。ナノクリスタル積層膜では、アルミナフィルター上にシリカライトナノクリスタルを積層させた後、再度水熱合成によってシリカライト保護層を形成させる。そのシリカライト保護層形成時にナノクリスタルが一部成長することで、水の分離性能と分離速度が向上することが明らかとなった。特に、ナノクリスタル層厚さ(ナノクリスタル積層量)、保護層形成時の水熱合成温度と溶液のpHが重要なパラメーターである。これらのパラメーターを適切に設定することで、共沸混合物であり蒸留塔では分離不可能な高濃度エタノール水溶液(エタノール濃度90%以上)においても、親水性ナノクリスタル積層膜を用いることで水の選択分離が可能となった。水-アセトン系における蒸留塔とゼオライト分離膜を組み合わせた高度分離プロセスでは、先ず蒸留塔でアセトン濃度80%まで濃縮し、その後ゼオライト膜によってさらに水を分離する方法が効率的であることが明らかとなった。建設コスト、光熱費、人件費を考慮すると約5年後に経費はプラスに転じ、蒸留塔のみのプロセスと比較すると10年後には約10^8の経費削減が可能であることが示された。
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