研究概要 |
ジュール加熱食品加工法は,容器内に食品と2枚の電極板を入れ,加熱対象である食品に直接交流電気を印加することにより,食品自身が電気抵抗体として発生するジュール熱を利用する方法である.食品加工において一般的に使用されている伝熱加熱とは加熱原理が異なるため,温度制御精度が良い,エネルギ変換効率がよい,焦げや加熱凝縮物を生じないなどの特徴を有する.しかし,食品の加熱加工における発熱現象を解明するため,これまで伝熱加熱法による熱移動に関する理論や実験のデータはたくさんの報告がなされてきた.しかし,ジュール加熱法における発熱や熱移動解析については,2次元での非定常温度分布解析,3次元非定常温度分布解析などがある程度で報告例は少ない.一方,熱画像撮影装置などを用いることにより,2次元での表面温度は容易に観察できるものの,3次元での温度分布を計測するためには,熱電対のような温度センサを測定対象物中に挿入する必要があり,測定対象物に混入物のない温度分布データはこれまで得られていない. そこで,本研究では,ジュール加熱法における食品内部の温度分布を非破壊的かつ連続的に観察し,その現象を熱伝導および電位分布解析を行うことにより再現することを検討した.本研究では,温度により発色が異なる感温液晶マイクロカプセルを用いて,容器内の発熱現象を直接観察し,また容器内の電位分布を測定して実験データを取得した.また,差分法を用いた熱伝導および電位分布解析を行い,実験結果を再現するモデルの作成を行った.本研究では,ジュール加熱で通常用いられている対向電極の他に,様々な食品加工へ応用展開するため,電極板の面積や設置位置をずらした場合についても検討した.その結果,実験結果と解析結果は,非常に良く一致しており,ジュール加熱法における発熱および熱移動現象解明の基礎を構築することができた.
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