現在、工業的に用いられている多成分系粒子(数μm)の多くは固相反応法によって製造されているが、粉砕プロセスを経ているため、形態が不規則かつ粒径分布が悪い、1μm以下の粒子の製造が困難、不純物を含んでしまうという問題がある。本研究で検討する火炎式噴霧熱分解法は従来の電気炉を用いた噴霧熱分解法とは異なり、反応熱源として火炎を直接用いる。また、噴霧原料液に、結晶を促進させるフラックス塩やポリマーなどを金属硝酸塩などに加えて用いる。本研究の目的は、火炎式噴霧熱分解法による微粒子合成プロセスの開発である。モデル材料としては、単純酸化物と比べ合成が困難とされる多成分系蛍光体材料を対象とする。また、その合成粒子の粒径・形態・光学的特性の計測も行う。 平成17年度には以下の手順により、火炎式噴霧熱分解法による高結晶性の多成分系微粒子の合成プロセスを開発した。(1)炎式噴霧熱分解装置を製作した。この装置で、噴霧装置として大容量の液滴が発生できる噴霧発生器を用いた。(2)製作した噴霧熱分解装置を用いて、蛍光体材料の微粒子の合成実験を行った。原料溶液として、水に各種の硝酸金属塩などを溶解させたものを用いた。この溶液を噴霧発生器により、噴霧し液滴化させ、キャリアガスの窒素により火炎中に導入した。(3)火炎の燃料ガスには、CH_4およびO_2を使用し、マスフローコントローラーにより流量を精密に制御した。(4)操作条件であるフラックス塩の量・種類、プリカーサーの種類により、合成粒子の粒径分布、表面形態、結晶性、光学特性、蛍光特性がどのように変化しているかを検討した結果、従来の電気炉を用いた噴霧熱分解法により合成された粒子と比べて、熱源として火炎を用いることで、より結晶性(蛍光特性)が高い粒子を得ることができた。
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