本研究では、超臨界二酸化炭素を利用した生体認識型薬剤を開発するための基礎的な知見として、超臨界流体を含む混合溶媒中での圧力誘起相分離(PIPS ; Pressure Induced Phase Separation)法を用いたマイクロ・ナノ粒子の表面改質法について検討した。ポリ乳酸(PLA)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の高分子が溶解した二酸化炭素とエタノールの混合溶媒中に、シリカ、酸化チタン、タルク等の酸化物粒子を分散させた後、低速減圧を行うことで、酸化物粒子表面にコアセルベーションが形成し、酸化物粒子の表面特性を高分子により改質可能であることがわかった。また、コアセルベーションの形成には、酸化物粒子表面の水酸基に対して親和性を有する高分子が有効であることがわかった。また、二酸化炭素雰囲気下においても、粒子のナノサイズ化に伴う粒子の凝集が顕著なったが、粒子の再分散には高出力の超音波分散装置が有効であることがわかった。 また、酸化物ナノ粒子表面にペプチド、糖鎖、タンパク質等の生体認識分子を導入するための手法として、シランカップリング剤による酸化物粒子の表面改質法についても検討した。超臨界二酸化炭素中に少量の水を共溶媒として添加することで、酸化物表面の水酸基と白カップリング剤が結合可能であることがわかった。ナノ粒子の分散溶媒として、超臨界二酸化炭素を用いることで、通常の液体溶媒で問題となる気液界面における界面張力による粒子の凝集を抑制することができた。また、超臨界二酸化炭素抽出を併用することで、未反応のシランカップリング剤の除去も可能であることがわかった。
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