研究概要 |
環境負荷の大きい硫酸を使った化学プロセスを、固体酸触媒プロセスへ転換するためには、水の中で機能する固体酸触媒の開発が必須である。12-タングストリン酸H_3PW_<12>O_<40>のCs^+酸性塩Cs_<2.5>H_<0.5>PW_<12>O_<40>(Cs2.5)は水に難溶であり、かつ強酸性と高い表面疎水性により水中でも固体酸触媒として機能するユニークな材料である。問題は、Cs2.5の一部が水に溶出ことと、低沈降性かつ濾過回収できないことである。本研究では、3-アミノプロピルトリエトキシシランで表面修飾したアモルファルシリカ(SiO_2-APS)の表面にCs2.5ナノ微粒子を固定化することでこれらの問題の解決を試みた。 Cs2.5は水に5%程度溶出するが、SiO_2-APS表面にCs2.5を固定化する(Cs2.5/SiO_2-APS)と溶出はほぼ完全に抑制された。またCs2.5/SiO_2-APSは、沈降性も高くかつ簡便な濾過操作によってほぼ完全に触媒回収できた。電子顕微鏡観察および細孔構造解析から、Cs2.5一次粒子(約13nm)がSiO_2-APS表面に固定化されていることが分かった。 Cs2.5/SiO_2-APSは、多量の水存在下での酢酸エチル加水分解、2-メチルフェニルアセテート加分分解、2,3-ジメチル-2-ブテン水和反応、α-ピネン水和反応に、Cs2.5とほぼ同等の高い活性を示した。特にα-ピネン水和反応に対して、高シリカゼオライトやイオン交換樹脂などのこれまで知られている水中固体酸はモノアルコールのみを与えるが、Cs2.5/SiO_2-APSはジアルコールを生成する特異な触媒特性を示すことが分かった。
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