本年度は、成型体中での細孔の空間配置構造を精密に制御したゼオライト作製の検討を進め、相分離の過渡構造を凍結したマクロ孔-シリカゲルメゾ孔からなる二元階層構造を有するシリカゲル成型体を前駆体とした、スチーム処理によるゼオライト化を進めた。これにより、相分離の過渡構造を凍結したマクロ孔を保持したままメゾ孔を有するシリカゲル骨格をゼオライト結晶子の集合体に転換することができた。得られた材料は、相分離の過渡構造を凍結した大きな連続貫通マクロ孔-ゼオライト粒界に位置する小さいマクロ孔-ゼオライト結晶格子中のミクロ孔と三元階層構造を有することが確認された。こうしたゼオライトはMFI型の空間構造に帰属され、シリカのみからなるシリカライトのほか、シリカアルミナよりなるZSM5やシリカチタニアよりなるTS1の析出も可能だった。より精密な構造制御のためにガラス表面でのゼオライト薄層の析出も行い、シリカガラスやホウケイ酸ガラス表面にMFI型のゼオライト結晶薄膜の析出が可能なことを見出した。ガラスのアルカリ条件下での溶解性の違いにより結晶化のしやすさが異なったが、耐アルカリ性の高いホウケイ酸ガラス表面でもMFI結晶の析出が認められたことにより、シリカライトのみならず、ホウ素を含有したゼオライトをガラス上に析出することが可能となった。今後はアルミナをあらかじめ薄膜としてシリカガラス上に塗布することにより、シリカアルミナ系のゼオライト薄層の形成をすすめる。また、こうしたゼオライト薄膜の機能材料としての応用も進めていく。
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