中温度領域(150-300℃)において動作可能な新規固体電解質形燃料電池の開発を目指し、プロトン伝導性電解質材料である硫酸水素セシウム(CsHSO_4、以下CHSと略記する)およびリン酸二水素セシウム(CsH_2PO_4、以下CDPと略記する)による電解質膜の開発を行ってきた。これらの新規電解質材料のプロトン伝導特性について詳細に検討してきたが、新規電解質材料を用いた場合の電極反応特性についての詳細な検討は行われていない。今年度の検討では、CHSおよびCDPを電解質に用いた場合の発電時における電極界面抵抗を測定し、その電解質材料固有の特徴について検討することを目的とした。 CHS単体を電解質膜に用いた場合の無加湿水素-酸素燃料供給による発電時のCHS燃料電池の交流インピーダンススペクトルを測定した。その結果、アノードの電極抵抗に相当する円弧の直径が時間経過に従い増大している傾向が観測された。同条件におけるカソードの電極抵抗は、時間経過に対し顕著な変化は観測されなかった。アノード電極において2CsHSO_4+4H_2→Cs_2SO_4+H_2S+4H_2Oの反応が進行し、CHSと燃料のH_2から触媒被毒種であるH_2Sが生成することが予想され、アノード電極抵抗の増加はH_2Sの生成が主要因であると考えられた。一方、CDP単体を電解質膜に用いた場合、30%加湿雰囲気、250℃の条件において、アノードとカソードの両者において劣化は観測されず、安定した発電特性が得られたことからCDP電解質の有用性が示された。交流インピーダンススペクトル測定から、水素-酸素燃料による発電の場合、CDP燃料電池のアノード過電圧はオーム損に因るものであり、カソード過電圧は、輸送過程を伴う酸素の還元反応特有のスペクトル形状が観測された。カソード過電圧は過電圧全体にしめる割合が大きく、カソード触媒の開発と電極構造の最適化が必要である。さらに、250℃発電における影響を調べるために白金担持カーボン触媒の白金のシンタリングの観測を行った。市販の白金担持カーボン触媒では(白金粒径:ca.3nm)、250℃から300℃にかけて急速にシンタリングが進行する。今後シンタリングの速度論的解析と触媒担体の影響について検討することで、中温度領域における電極構造の最適化につなげることができる。
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