研究課題
平成18年度は、実験計画に従って、磁力を用いた血管・尿管(三次元管状構造)の構築法の開発を行った。厚み5mmの棒磁石を芯にし、機能性磁性ナノ粒子で標識したそれぞれの細胞(血管の場合は血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の3種類、尿管の場合は移行上皮細胞)を棒磁石に順番に配置・接着させていくことで、厚みをもった細胞組織を構築することに成功した。その細胞組織をコラーゲンゲルで固めて、芯の磁石を引き抜くことで、5mmの管腔を持った小口径の管組織を構築した。その管状構造の断面図を観察すると、尿管の場合は移行上皮細胞が5層の細胞層を作っており、また血管の場合は、磁石に巻き付けた順に内側から、血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の3種類の細胞が層構造を作って配列した。さらに研究を発展させ、この技法を脱細胞化血管への細胞播種へ応用した。血管の組織工学の場合、人工血管の弾性が重要なファクターであることから、動物の血管を無細胞化(脱細胞処理)して使用する手法が注目されているが、目的の細胞を脱細胞化血管に高効率で播種することは困難だった。本研究では、ブタの脱細胞化血管に棒磁石を挿入し、機能性磁性ナノ粒子で標識したそれぞれの細胞を磁力で播種したところ、磁力がない場合(従来法)では10%程度であった細胞の播種効率を、100%近くまで向上させることに成功した。これらの結果から、磁力を用いた細胞の播種方法は、複雑な形状の組織を構築するのに、優れていると考えられ、機能性磁性ナノ粒子を用いた三次元生体組織の構築法は、組織工学にとって、有望な手法であると考えられる。
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Journal of Bioscience and Bioengineering (印刷中)
Biotechnology and Bioengineering 96・4
ページ: 803-809
Journal Biomedical Materials Research part B Applied Biomaterials 77・2
ページ: 265-272