研究概要 |
目的タンパク質と固体表面との間に相互作用を緩和するクッションタンパク質を挟み込み,さらに固体表面親和性ペプチドタグを連結することで結合に配向性・自由度を持たせる,金属表面への新規なタンパク質固定化法について検討を行った.まず,ステンレス表面に高い親和性を示すペプチドをFliTrx^<TM>ランダムペプチドライブラリーシステムを用いて検索した.その結果,N末端に2つのアルギニン残基を有し,かつ酸性アミノ酸残基を複数個含むペプチド(SS25)が高い親和性を示すことを見出した.牛膵臓由来RNaseAにSS25を連結したタンパク質を用いて,ステンレス表面に対する付着特性を調べたところ,タグを連結することによる固定化の配向制御および表面上における構造崩壊の抑制が強く示唆される結果が得られた.また,データベース検索を行い,高い物理強度を有するタンパク質のモデルとして超好熱始原菌Thermococcus kodakarensis由来RNaseHII (RNaseHII_<TK>)を採用し,付着特性の解析を行った.その結果,ステンレス表面に対する不可逆付着率は68%であった.また,付着後の残存活性を調べたところ,10.3%であった.さらに,RNaseHII_<TK>のNおよびC末端にそれぞれSS25を連結させた変異型酵素の調製を行い,同様に付着特性解析を行ったところ,タグ連結酵素はどちらも見掛け直角平衡型の吸着等温線を示した.すなわち,タグを介してステンレス表面に非常に強固に付着していることが示唆された.さらにステンレス表面付着後の残存活性率が60〜70%とRNaseAの場合と比べて高い値が得られた.したがって,高い物理的強度を有するタンパク質に親和性ペプチドタグを連結することで,固体表面上で付着の配向が制御されると同時に非常に高い機能保持効果が得られることがわかった.
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