リポソーム内封入カタラーゼ(CAL)の調製と特性、過酸化水素分解反応時の安定性および長期連続的グルコースオキシダーゼ反応操作への効果について検討して以下の結果を得た。 1.CALの活性と安定性に及ぼすリポソームの膜組成と粒子径の影響 平均粒子径(50、100nm)と脂質膜の荷電状態が異なるCALを調製し、安定性を比較した結果、負電荷を5%含有した100nmのCALでは調製時及び保存時にCA活性が安定化された。CAL内ではCAが高濃度であったためCAの4量体構造が安定化され、遊離CAに比べてCA活性が長時間持続した。リポソーム共存下におけるCA構造の変化を蛍光分析により明らかにした。 2.過酸化水素分解反応時のCAL活性の安定性 CAL系では過酸化水素のリポソーム膜透過抵抗によりCAL内の過酸化水素濃度が低く維持されたため遊離CAに比べてCA活性が著しく安定化された。 3.リポソーム内封入グルコースオキシダーゼ(GOL)反応に及ぼすCALの効果 試験管では、GOL/遊離CA、GOL/CALいずれの系でもGOLによる酸化反応速度すなわち過酸化水素生成速度が抑制され、生成過酸化水素がほぼ完全に分解されてグルコースのほぼ完全転化に至った。一方、エアリフト型気泡塔では、気液流動のため上述の両触媒系でグルコースに対するGOL膜透過性が増大した条件下でも過酸化水素が蓄積せず高い酸化速度が得られた。また反応pHを7.4の一定で操作した場合に比べて、制御しない場合は生成グルコン酸により反応pHがGO活性に有利な酸性領域となり、酸化速度がさらに増大した。pH制御をしない場合、GOL/遊離CA系では酸性領域に等電点を有するCAがGOL表面に疎水性相互作用で結合してGOLの反応性を低下させたのに対し、GOL/CAL系ではこのGOL-CA間相互作用がなく、高い酸化速度が持続した。
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