研究概要 |
デトネーション波を間欠的に発生させて,推力や仕事を獲得するパルスデトネーションエンジン(PDE)の研究開発が日本,米国,欧州で行われている.PDEの利点の一つは,推進剤をPDEの管状のエンジンの内部に部分的に充填(以下,部分充填)することで,化学的エネルギーを効率よくPDEの運動量に変換できることである.しかしこの部分充填効果の最大値に関しては,未だ明らかではない.理由はデトネーション波を生成するための「開始距離」の存在にある.低い部分充填率でのインパルスが開始距離または部分充填のどちらの影響を受けているかの判別が,困難である.また,部分充填率が低下すると,インパルスの計測を推力面(閉管端)の圧力計測で行った場合,誤差が増大するという問題がある.本年度の研究では,PDEと類似現象である不活性ガスの真空下での破膜・膨張現象を観測することで,宇宙空間でも部分充填効果が存在するか否かを実験的に観測した.その結果,宇宙空間でも,部分充填効果が,部分充填それ自体によってもたらされること示した(慣性ガスの存在なしに,推力増大があることを確認した).不活性気体駆動弾道振子を用いて,低真空下での部分充填効化を実験的に定量的に測定した.高圧管内の気体にヘリウム,窒素を用いた場合両方において,特性曲線法による計算値と極めてよい一致を示した.また,計算では比熱比を低下させると,同じ部分充填率でも,比インパルスが増加することが示された.このことはより高い自由度をもつ分子が,等エントロピー的に膨張した場合に,並進エネルギーへのエネルギーの分配率がより小さくなることによって,説明可能である.この解析結果は,高温の既燃ガスに置いて,高い部分充填効果が存在することを示唆する.回転バルブを用いた間欠作動衝撃波管を開発し,間欠的なジェットの生成に成功した.
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