研究概要 |
本年度は以下に挙げられる課題に関する研究を行なった。 1.マイクロ波放電型イオンエンジンにおける推進性能のエンジン形状依存性 2.容積の利用効率の高い矩形小型イオンエンジンの開発 3.小型マイクロ波放電型中和器の開発 4.数値シミュレーションによる内部物理の解明および最適な放電室形状の模索 1に関して、アンテナ形状、磁場形状を変更し、イオンエンジンの推進性能を測定した。アンテナ形状に関して6種類のアンテナにおいて性能を測定した結果、星型アンテナを用いたときが最も性能がよかった。さらに磁場強度を変更して性能を測定したところ、磁場強度で最適値が存在することが明らかになった。これらの知見をもとに、最適化した状態で推進性能を測定したところ、8Wで12mAのイオン電流が得られ、性能の向上が確認された。 2に関して、5×5×3cmの直方体エンジンを作成し、性能を測定した。しかし円柱状エンジンとは異なり、放電室全域ではなく偏ってプラズマが生成し、性能の低下が見られた。これより矩形放電室用に磁場形状の抜本的な改良が必要であることがわかった。 3に関して、小型マイクロ波放電式中和器の開発を行なった。中和器の圧力、引き出し面積、放電室形状、磁場強度の性能依存性を調査し、最適化を行なった結果,投入電力4Wで12mAの電子電流が得られる中和器の開発に成功した。 4に関して、放電室内の電磁界とプラズマ生成過程の内部物理解明のために、3次元非定常数値解析コードを作成し、数値シミュレーションを行った。電子の挙動およびエネルギー授受を解明するために、電子の運動解析には粒子法を、マイクロ波の伝播は有限差分時間領域法を用いた。その結果、電子エネルギーの上昇はアンテナとECR領域の距離に強く依存すること、また、アンテナ挿入方向に対して、磁場の向きが平行な場合が垂直な場合に比べて電子エネルギーの上昇が大きいことが確認された。
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