研究概要 |
本研究では,超伝導コイルの励磁電流を共振回路により正弦波状に変化させる.これは地磁場の衛星姿勢への影響を排除するために必要な技術である.また,このような励磁方式において2衛星の相対位置を制御するために,交流電流間の位相差を変化させて磁気力を制御する方法を提案している. 今年度は超伝導コイルの駆動方法に関して検討を進めた.共振電流の位相制御は,スイッチを介して共振回路に接続された直流電圧源により行う.共振回路のキャパシタ電圧が零交叉する瞬間に短い時間だけスイッチを導通させて直流電圧を印加する.その間にキャパシタに流れ込む電荷により,共振電流の位相が変化する.また共振電流の振幅を保つために,共振回路で生じるエネルギー損失を補う必要があるが,これは同様の方法で実現することができる.ただしこの場合,スイッチを導通させるタイミングはキャパシタ電圧がピークとなる瞬間である.この原理を振り子運動と対応させて説明する.ある振れ幅の振り子運動を考える.位相/振幅の制御タイミングは,それぞれ振り子の位置が運動中で最も低い地点/高い地点にある瞬間である.それぞれの瞬間に,速度は変化させずに位置のみを変えることが位相/振幅の制御である.つまり振り子の高さが電圧に,速度が電流に対応し,電圧の印加は振り子の速度を変化させずに位置を変えることに対応する. このような制御を実現する回路を構成し,共振電流の位相/振幅制御実験を行った.常電導コイルを用いた実験では,提案する制御手法により共振電流の位相と振幅の制御がそれぞれ可能であることが確認された.また,提案手法を超電導コイルに適用するための基礎実験として、高温超電導コイルのヒステリシス損失の評価するための実験を行った。これにより,提案手法を検証するために必要な超電導コイルの性能見積もりを得ることができた。これは具体的には、ヒステリシス損とインダクタンスの関係であるが、この基礎検討に基づき,現在実験用コイルの改造を行っている. 次年度においては,この改造されたコイルユニットを用いて,提案手法を超電導コイルに適用して、位相及び電流の制御を行い、またこの超電導コイル電流制御系を組み込んだハードウェアインザループシミュレータを構築して、提案手法による衛星相対位置制御の総合的な評価を行う実験をする予定である。
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