研究概要 |
本課題は,新しい粘性流場の逆解析手法を示し,船型設計の支援ツールとして応用していくことを検討するものである.研究初年度である平成17年度は2次元乱流場の逆解析手法の構築を試みた.計算の対象としたのは2次元翼形状まわりの流れであり,指定した速度場,あるいは圧力場を実現するような翼形状を求めることが目標である.翼形状の表現手法については4つの3次Bezier曲線を接続して翼輪郭を表現した.これにより翼形状はBezier曲線のコントロールポイントの座標そのものを設計変数とすることができる.本手法は,流場の支配方程式であるRaNS方程式および連続の式の残差を流場(速度場,圧力場)と形状(ここでは翼形状)の関数として捉え,その第一変分が0となるように形状と流場を拘束することによって逆解析を実行するものである.局所線形化に基づく定式化であるため,目標とする流場を現在の流場から大きく変化させてしまうと非線形影響による誤差が生じることになる.この誤差については,ニュートン法による繰り返し計算によって修正を行っている.また,本研究の手法は逆解析を行う際に非常に大規模なマトリクスを解く必要があるが,この解法には,LAPACK(Linear Algebra PACKage)を使用し,高速化を図った. 計算例として,NACA0012翼型を初期形状として,レイノルズ数3000000,全乱流状態で逆解析を行った.境界層近傍の数点の速度場を変更させる解析を行ったところ,比較的短時間で計算を実行することができ,解として出力された翼形状に対して流場解析を行ったところ,実際に目標とした流場が実現されていることを確認した.以上から,本手法によって2次元流場の逆解析が適切に行われたと判断し,これにより本年度の研究目標は概ね達成されたと考える.
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