本研究はオホーツク海の調査に用いるための水中移動体を実現するため、水中で流体力のみを利用して移動やホバリングをしていると考えられるマンタ(オニイトマキエイ)をモデルとした生物型水中移動体を開発することを目的とし、実機の開発・実験と数値計算の両面から研究を推進する。 平成17年度はヒレ運動の解析を行うため、任意のひねり角および位相遅れを実現できる羽ばたき推進性能測定装置を製作し、これを回流水槽に設置してその性能を評価した。その結果、これらの装置が羽ばたき型推進の特性評価に利用できること、計測される推力は翼素理論による予測と同様の傾向を示すことが示された。ただし計測された値は予測値より10倍程度大きく、非定常効果の適切な取り扱いが必要であることが示唆された。また計測の信頼性向上や可視化による流れ場の把握などが課題として残った。 また、マンタのように柔らかいヒレを変形させながら振る遊泳方法を解析するため、柔らかいヒレを有するマンタ型小型水中移動体を製作し、水槽試験によってヒレの変形の様子を観察するとともに、ヒレの変形を数値解析によって予測した。この数値解析では流体力の予測には翼素理論を用い、これとヒレの変形の材料力学的計算とを連成させて解くプログラムを新たに開発した。この解析結果から、非定常効果を考慮しない場合は実験結果と解析結果の傾向に違いがあること、非定常効果を仮想質量として導入することで、傾向が近づくことが示された。しかし仮想質量の適切な導入方法を示すにはいたらず、今後の研究課題として残された。またこの解析により、ヒレのひねり方を適切に与えることによる羽ばたき運動の性能向上が可能であることが示唆された。
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