舶用ディーゼルエンジンに適用するPM(Particulate Matters:排出微粒子)低減システムは、排気ガス中のPMを高温に再加熱し、低減させる仕組みとしている。排気ガスは、PMが燃焼する650℃以上に加熱する必要がある。提案するPM低減システムは加熱源に誘導加熱を用いることによって、優れた温度制御性とメンテナンスの容易さを備える。誘導加熱の場合、被加熱物に強磁性体の金属を用いることで効率良く加熱が可能であるが、キュリー温度以上の高温に加熱すると、強磁性体から常磁性体へと金属の性質が変化する。そのため、回路パラメータ(インダクタンス値、抵抗値)に影響し、これらの変化に応じた制御と、常に安定動作する誘導加熱電源が要求される。 従来はインバータの周波数追尾制御など高精度の制御が適用されていたが、今回はキュリー温度以上まで容易な制御で加熱可能な電源として、並列共振ソフトスイッチングインバータを提案する。提案する電源は、ソフトスイッチングによりスイッチングストレスを軽減し、安定動作を実現する。また、加熱温度の変化とともに回路パラメータが変化し、その影響で回路特性も変化するが、今回はこの特性変化を利用することによって常にソフトスイッチングを実現する回路構成としている。ただし、キュリー温度以下ではスイッチ電流が高くなる傾向にあるため、PWM(Pulse Width Modulation)によりスイッチ電流最大値を制御する。 誘導加熱ユニットの加熱温度は種々の影響から円筒中央部と円筒端部で違いが生じ、温度分布が均一とならない。そこで、ワークコイルの形状について検討した結果、円筒端部にワークコイルを集中させることにより温度分布の均一化は可能であることが加熱実験により検証された。これにより金属の性質変化のばらつきが軽減し、電源回路の設計指針が示された。
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