地球環境保護の観点から、ディーゼルエンジン排気ガス中の有害物質を低減することは急務とされる。そこで、PM低減システムの実用化を目途に実際の舶用ディーゼルエンジンへ提案システムを実装し運用評価を行った。PMは、フィルターと排気ガスの接触面積を広くするか、または、加熱フィルター内の雰囲気温度を高温化することにより低減率を高くできる。ただし、接触面積を大きくすると摩擦抵抗が増大するため、機関性能への影響を考慮する必要がある。また、フィルター内雰囲気温度を高温化するには大出力の電源が必要となり、実用化に際してコスト面で考慮する必要がある。 今回は、ディーゼルエンジンへの影響を最小限にするため、加熱フィルターの構成は排気ガスの流路を出来る限り妨げない形状で実際にディーゼルエンジンに設置し、運転状態における機関性能への影響について検討した。提案するPM低減システムはフィルターの加熱源に誘導加熱を用い、フィルターの材質に強磁性体金属を用いることで省電力化が可能である。しかし、強磁性体金属にはキュリー温度が存在し、この温度で非磁性体へと磁性が変化するので負荷の回路パラメータが変化し、誘導加熱電源への負担が増す。これに対して、非磁性体金属の場合は磁性の変化がないので誘導加熱電源への影響は少ないが、加熱されにくいといった欠点がある。そこで、強磁性体金属と非磁性体金属の利点を利用し、誘導加熱電源への負担を軽減しながら効率的に高温加熱可能なフィルター構成について検討した。 その結果、ディーゼルエンジンを運転した運用評価実験により、提案するフィルター構成では本体への影響はほとんど見られることがなく、強磁性体金属に比べ回路パラメータの変化を抑制しながら効率の良い加熱特性となるフィルター構成法の指針を示すことができた。今後の課題としては、実用化のためにPM低減率100%の実現が必要と考える。
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