本研究では、アジア・北米太平洋航路等の幹線定期船航路について、所与の設定条件(荷動き、コスト、就航船など)に基づいた、適切な航路編成の案を自動的に計算・出力・表示する、「航路編成作成支援システム」を開発することを目的とする。すなわち、計算機に上記を実現するソフトウエアアプリケーションを構築し、画面表示等で適切な航路編成案を示すことのできるシステムを製作する。 航路編成作成支援システムの構築に向け、これまでに試作したシステムの挙動を調査したり、船社から意見を聞いたところ、次のような問題があることが分かった。そのため、全体的に計算過程の見直しを行うこととし、内部設計を行った。 ・試作システムで用いられている、輸送時間のみをパラメータとしたハフモデルによる経路配分計算では実際の輸送量との誤差が大きい。この原因をアライアンス(複数の船社による協力体)の営業力や営業方針といった固有の特徴にあると推定し、アライアンス固有の係数をパラメータに含めた多項ロジットモデルで経路配分モデルを設計した。 ・試作システムでは、時間的な航行可能性判断が甘く寄港スケジュールが実現不可能になるため、荷役時間等を考慮したスケジューリング機能を導入することとした。より正確な航行速度や、実際の航行でのスケジュールの遅れを取り戻すための「余裕時間」を算定し、遺伝子評価に取り込むよう評価関数を設計した。 ・試作システムでは、寄港曜日を基にした遺伝子表現としていたが、これでは変異や交差による致死遺伝子の発生確率が高い。そのため、航行速度を基本とした遺伝子表現となるよう遺伝子設計を変更した。 また現在、これらの有効性を実証するためのシステム作成を開始している。来年度はシステムを完成させ、協力船社において評価を受け改良、実用化につなげる予定である。
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