本研究では、慣性航法装置(INS)の性能を向上させ、計測誤差を軽減させることを目的とする。回転機構をもつプラットフォーム(PF)上にINSを載せ、INSのアライメント中及び慣性航法演算中において、設計した回転則に基づきINSをある内部座標軸中心に回転させることにより、当該計測誤差を時系列的にキャンセルする。本研究では上記効果をもたらす回転運動、更に移動体へ適用した場合にも上記効果が実現される回転制御システムを構築する。この手法の効果を実機を使用したシミュレーションにて確認すると共に、当該システムを組み込むPF適用したINSを移動体に搭載させ、誤差軽減の補償精度を検証する。これによりINSの計測誤差が目標値を実現することを実験より示す。 本年度(平成19年3月31日)は上記内容を実現するために下記の事項を実施し、同下記成果を得た。 1.回転アルゴリズムの設計・構築、及び実験 昨年度製作した回転台を、任意の低回転速度にて基準座標系1軸周りに一定速回転し、リアルタイムに回転状況を検出することにより任意の回転角度にて回転方向を切替えるアルゴリズムを設計・構築した。また当該アルゴリズムから出力される指令信号を、回転台制御部へ通信インタフェースを介して送信するソフトウェアを構築した。INS実機を用いて、各回転運動によるINSの性能向上効果を実験にて検証した。 <成果>低速回転、一定速回転、回転方向の切替えを同時に施す回転運動を基準座標系1軸周りにINSに与え続けることにより、従来INSが所有する誤差が大幅(最大約1/4程度)に抑制されることが確認された。 2.誤差補償アルゴリズムの設計・シミュレーション INSの出力値に含まれる誤差特性を学習し、当該誤差を補償し位置情報を出力するニューラルネットワークを設計した。AUV実機の航行プロファイルを使用して、当該ネットワークの誤差補償精度をシミュレーションにて検証した。この際、同プロファイルにおけるANSの測位値を学習データとして使用した。 <成果>学習時の航行プロファイルの傾向、精度により補償精度は異なるが、最も良好な場合では、約2海里/時の誤差発散傾向があったINS出力を当該ネットワークにより約0.06海里/時にまで軽減することが確認された。一方、AUVの航行プロファイルの変化周期が短い場合、当該ネットワークの補償精度が著しく劣化することも確認された。
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