希薄有害イオン(As(V)、Se(VI)、Cr(VI)、F(I)、Cd(II)、Pb(II)、Zn(II))を含む人工廃水に対し、Fe(III)またはAl(III)塩を加え少量の水酸化物を生成させ、希薄有害イオンを除去する方法について、実験と解析の両面から定量的考察を行った。解析に関しては表面錯体モデルを用い、水酸化第二鉄が吸着体である場合に広くデータベースとして用いられているDzombak and Morel(D & M)の値を用いて、実験値との比較を行った。 As(V)はFe、Al共に親和性が高く、As(V)10mg/dm3に対して重量比2倍程度の少量で排水基準値以下に除去可能であることがわかった。また、SO4を共存させて同様の検討を行ったところ、その影響はほとんど見られないことが確認された。さらにD & Mモデルは定性的には実験結果を再現するが、定量的に再現できないことが確認されたため、実験結果に沿う新たな吸着平衡定数等を提案した。 Se(VI)、Cr(VI)はAs(V)に比べてFe、Alの親和性は低く、SO4共存による妨害も受けるが、多量の添加により排水基準値以下に除去可能であることがわかった。また、D & Mモデルは定量的にも比較的良好に実験値を再現することがわかった。 F(I)はFeに対する親和性は低いが、Alに対する親和性は高く、D & Mモデルは定量的にも比較的良好に実験値を再現することがわかった。陽イオンに関しては、FeおよびAlの双方の添加により排水基準値以下に除去可能ではあるが、いずれもD & Mモデルは定量的に実験値を再現できないことが確認されたため、実験結果に沿う新たな吸着平衡定数等を提案した。 水酸化アルミニウムを吸着体とする場合には、D & Mモデルに相当するデータベースが存在しないため、各種イオンに対して実験結果に沿う吸着平衡定数等を提案した。
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