日本原子力研究開発機構で開発された高密度水素負イオン源では、負イオン密度を増加させるために少量のセシウム蒸気をイオン源内に導入し、低仕事関数となったプラズマ電極表面で水素正イオンや原子が負イオン化する反応を利用している。しかしながら、セシウムの使用は頻繁なイオン源保守が必要となることや、加速部への漏洩による耐電圧の劣化の原因となるため、セシウムフリーで大電流の負イオンを生成できる負イオン源の開発が望まれている。これまでの実験結果は、負イオン生成量がプラズマ電極の仕事関数のみに依存することを示していることから、平成17年度においては、低仕事関数材料のプラズマ電極への適用性の検討を行った。その結果6ホウ化ランタン及びアルカリ金属ドープタングステンが有望であるとの結論を得、下記に示す電極の試作を行った。 1)6ホウ化ランタン(LaB_6) 低仕事関数材である6ホウ化ランタン(LaB_6)で小型のプラズマ電極を作成した。LaB_6の電子放出量は温度に強く依存することから、プラズマ電極として用いる場合には温度制御が鍵となる。そこでプラズマ電極の温度制御システムを設計・製作した。平成18年度において作成した電極で負イオン引き出し試験を行い、電極温度が負イオン生成に与える影響について検討する計画である。 2)アルカリ金属ドープ金属材料 金属材料にアルカリ金属イオンを照射すると低仕事関数表面が得られることに着目し、それらの材料のプラズマ電極への適用可能性について検討を行った。検討結果を元に、セシウムイオンを1x10^<16>n/cm^2注入したタングステン電極を作成した。平成18年度においてイオン源動作環境下での仕事関数測定、および負イオン引き出し試験を行う計画である。
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