従来の負イオン源では、負イオン生成促進のため少量のセシウムを添加し、仕事関数の下がった表面での負イオンの表面生成を利用している。本研究では、セシウムを使用することなく高密度の負イオンを生成することのできる負イオン源開発のための基礎研究として、低仕事関数材料に着目し、負イオン源への適用可能性を検討している。平成19年度においては、平成18年度までに作成したアルカリドープタングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム製プラズマ電極を負イオン源に取り付けて、イオン源動作環境下での仕事関数測定試験を行った。イオン源内のプラズマ電極の仕事関数計測のために、〜1273Kまで加熱した各種電極の熱電子を測定する方法と、レーザー照射による光電子測定する方法を利用した。その結果、以下の知見が得られた。 1) アルカリ金属ドープ材では、基材の仕事関数とほぼ変化がなかった。電極間でグロー放電を点弧して、表面酸化層の除去を図ったが、光電子量に変化はなかった。 2) 6ホウ化ランタンでは、今回試験した材料では最も低い仕事関数(2.35 eV)が得られた。また、低仕事関数を得るためには10^<-4>Pa台の高真空下で1〜2時間のべーキングが必要だが、一度ベーキングを行った後は、イオン源動作環境での低真空下(10^<-1>Pa台)においても、低仕事関数表面が維持されることがわかった。 これらの結果から、今後六ホウ化ランタンを採用したプラズマ電極を使用して、実際の負イオン生成試験を開始する予定である。
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