チタン酸リチウムはLiイオン伝導体として知られている。チタン酸リチウムを用いたLiイオン伝導率及びリチウム分離係数の予備的測定の結果、水銀アマルガム法と比べて、同等もしくは優れていることが分かっている。理論的には、リチウム同位体分離係数は1.1まで上げることができるが、予備測定では、Li_2Ti_3O_7の同位体分離係数は最高で1.06であった。そこで、同位体分離係数を理論値に近づけるため、イオン伝導率の高い新たな材料の開発を目指し、Liサイトの変化によるLiイオン伝導率の向上が期待される、LiサイトにLiを過剰に導入もしくはLiを欠損させたチタン酸リチウム(Li_2TiO_3)の材料製作を試み、その結晶構造の評価を行った。 Li_2TiO_3(Li_2O/TiO_2=1.00)よりLi量を多く(Li_2O/TiO_2=1.05)した試料を製作し、X線回折測定を行った結果、過剰に添加したLi_2Oは検出されず、Li_<2.1>TiO_<3.05>の単一相として安定な結晶構造をとることが分かった。また、Li_2TiO_3は水素によりTiが還元され、Oが欠損する性質を持っており、水素でLi_2TiO_3を還元することにより、LiサイトとOサイトの両者が欠損した非化学量論性化合物であるLi_<2-x>TiO_<3-y>を製作した。 製作したチタン酸リチウム(Li_<2.1>TiO_<3.05>及びLi_<2-x>TiO_<3-y>)内でのLi同位体のイオン移動速度差と物質中の移動機構の関係について着目し、リチウムイオン伝導性を評価するための電気化学測定を行うため、チタン酸リチウムのLiイオン伝導率をより高精度で測定可能な交流3端子及び4端子法を利用できる装置の設計及び製作を行った。次年度はこの装置を用い、高温時の結晶構造とLiイオン伝導率との相関、化学的安定性、同位体分離効率との関連等を評価する予定である。
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