現在安定に稼動しているRFガン・ライナックからのピコ秒電子ビームを、フェムト秒レーザーを集光することによって得られる相対論的ポンデラモーティブ力によって加速、数フェムト秒に切り出す方法に着目した。チタン・サファイヤレーザーからのビームをビームスプリッターで電子生成用と加速用に分割し、電子生成用は3倍高調波に変換し、RFガンに入射させて電子ビームを生成する。フォトカソード電子銃と電子線型加速器はレーザーと同期したRFによって駆動され、10MeVの電子ビームが得られる。シケイン型磁場圧縮器を用いて電子ビームのバンチ幅を衝突点で1ps以下・φ150μmにする。加速用レーザーは半径2.4μmまで収束させ相互作用させる。 このレーザーの強電場で加速する手法における最大の障壁は、空間的時間的同躬の困難さである。我々のグループではすでにRMS値でジッターが340fstいう、電子ビームとレーザーの時間同期安定性が得られているが、長時間のドリフト成分が存在する。レーザー光アライメント等の実験セットアップのために、長時間同期が必要であり、そのため平成17年度は、Sバンド位相検出器及び位相シフターを購入し、長時間における位相変調によるドリフトを一時間半で600fs(rms)まで抑えることに成功した。ビームの時間サイズはおよそ半値幅で1psであり、600fsの同期精度で問題がないであろう。またレーザー照射位置を動的フィードバックにより、20μmの位置精度で固定することに成功した。ビームの水平方向のサイズは約1mmであり、20μm動いたとしても加速される電子ビームの量は大差ないと思われる。かつポンピングYAGレーザーを安定化させることにより、ビーム電流安定性を4%(一時間半、rms値)まで安定化させることに成功した。 これら成果によって、レーザー光によって加速された電子ビームを積算して測定することが可能となった。
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