加速器駆動炉(ADS)は高い安全性を有するとされ、将来炉の有力候補の1つとして期待されている。しかし、ADSにおける安全性は炉心が未臨界状態に保たれることにより担保されるため、それを常時保証する未臨界監視技術の確立はADSの実用化に向けて必要不可欠な課題である。近年申請者は中性子相関法(ファインマンα法、ロッシα法など)に着目し、理論と実験の両面からこの問題に取り組んできた。ただし、これまで申請者が行ってきた実験は、主に申請者の考案した未臨界監視技術の基礎的な側面を把握するという観点で実施してきたものであり、空間依存性が表れないよう中性子検出器の配置を注意し、検出器の計数ロスを避けるために加速器ビームの強度を低くするなど、可能な限り理想的な状態に近づけていた。そこで、本申請では、より現実的な条件における未臨界監視技術の確立を目指し、(1)検出器空間依存性と検出器計数ロスの効果を軽減する中性子相関法理論式の導出、(2)モンテカルロ計算による理論式の検証(理論式導出の際に導入する各種近似の妥当性の確認)、(3)京都大学原子炉実験所・臨界実験装置(KUCA)と核破砕中性子源を用いた未臨界監視法の検証実験を行うこととした。特に、平成18年度では(3)京都大学原子炉実験所のKUCAを用いた検証実験を実施した。その結果、当初期待したほどの効果は残念ながら確認できなかったが、さらなる改良点として遅発中性子の影響を考慮することによって改善が期待できるとの見通しを得た。
|