研究概要 |
本研究では、内部被ばくによる胃腸管の合理的な線量評価法を開発することを目的にして,胃腸菅の1区分である胃に着目し,放射線感受性の高い細胞である幹細胞の位置を仮定した胃の簡易モデルを開発するとともに,モンテカルロ計算により,光子および電子に対する胃壁全体や幹細胞位置などの比吸収割合(SAF)を評価した。また,評価したSAFを用い,^<11>C,^<13>N,^<15>O,^<18>Fのような陽電子放出核種について,胃壁全体や幹細胞位置などのS値を評価した。その結果,胃内容物に均一分布した線源に対し胃の幹細胞位置の光子SAFは,10keV-4MeVの光子エネルギー範囲において,これまで放射線防護分野などで利用してきた胃壁全体の光子SAFに比べ最大5倍程大きくなること,胃の幹細胞位置に対する電子SAFは,これまで放射線防護分野などで利用されてきた電子SAFのような定数(たとえば,2.0kg^<-1>)ではなく,電子エネルギーに対して大きく依存すること,などを明らかにした。また,^<18>Fのような低エネルギー陽子放出核種に対する胃の幹細胞位置のS値は,これまで放射線防護分野などで利用されてきた胃のS値に較べ0.7倍程小さくなることが分かった。これにより,胃組織内の標的部位の決定が,線量評価に直接関係するSAFやS値評価において極めて重要であることを明らかにした。
|