γ線被ばくに対する歯エナメル質のESR計測を利用した線量計測については、中性子被ばくに対する解析例が少ない。そのため、臨界事故などの中性子-γ線被ばくの混在被ばくにおいては、得られた数値に大きな不確かさが存在する。 本研究の一年目となる今年度は、歯エナメル質を用いたESR計測について実績のある奥羽大学及び岡山理科大学を訪問し、研究の進捗に必要な意見交換を行った。その結果、過去の事故では、ESR計測については中性子被ばく対する感度がγ線被ばくと比較して低いため、推定された線量値はγ線被ばくによるものとされている点を聴取した。その一方で、人体中の元素あるいは治療用の金属材と中性子の相互作用により生じるγ線あるいはβ線に対するESR計測の感度が問題となる。そこで、歯の治療に用いる金属材が中性子被ばくにより生成する放射性同位元素を実測評価するため、歯の治療痕を模擬する金属材を作成した。作成した金属材を含めて、歯エナメル質の試料については、平成18年6月に原子力研究開発機構の過渡臨界実験装置で照射を実施する予定である。 また、中性子-γ線の混在被ばくに対して、人体中に生成される放射性同位元素量及び体内元素の中性子捕獲反応により発生するγ線による線量を解析するため、人体模型を利用した計算解析システムを開発した。この計算解析システムについては、平成18年6月スウエーデンで開催される「第10回中性子線量計測に関する国際シンポジウム」で発表する。
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