中性子-γ線が混在する被ばく状況について、歯エナメル質のESR計測に基づく線量評価法の研究を進めた。昨年度までの研究成果で、臨界事故のように大きな容積を持つ核燃料が放射線の発生源となる場合、その近傍で大線量の不均等被ばくを受けた者については、事故直後に必要な情報のうち、γ線による全身線量が、ESR計測で合理的に評価されることを解明した。 今年度は、体内元素の中性子捕獲反応で発生する二次γ線について、ESR計測に関係するエナメル質線量への寄与を定量的に解析した。放射線源として、自発核分裂によりウラン燃料とほぼ同等のエネルギー分布で中性子及びγ線を放出させるCf-252を使用した。実験には、頭部を簡単な形状で模擬したメタクリル樹脂(PMMA)製の物理模型(ファントム)を使用した。このファントムの口腔領域に空孔を設けて、その中に中性子に対する感度の差がある熱ルミネセンス線量計(TLD)を配置した。空間中にも、二種類のTLDを同様に配置した。これら二つの条件で配置されたTLDによる実測値の差から、頭部ファントムで生成した二次γ線の寄与を求めた。そまた、実験条件と想定される全身被ばく条件の幾何条件(全身-頭部のみ)、材質(人体組織-PMMA)が二次γ線の生成に与える影響については、既に開発した事故時の線量評価システムで定量的に評価した。計算解析に基づき、実測値の補正、線源カプセルで発生するγ線の寄与の調査を実施した。解析の結果、口腔部の全γ線量に対する二次γ線の寄与は最大でも10%程度であり、ESR計測における不確かさ(20%程度)と比較しても小さいことを明らかとした。
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