スキャニング照射治療法は、複雑な形状の臓器に適合した照射野を形成できることから粒子線治療の特徴である線量分布の局所集中性を最大限に生かせるが、これまで呼吸などに伴う治療中に動きのある体幹部腫瘍への適応が困難であった。本研究の目的は、スキャニング照射を体幹部腫瘍に適用する際の問題点を明らかにし、その解決法を探すことである。 治療中に移動する臓器に対してスキャニング治療を行った際に、照射野内の線量不足や照射野外へのはみ出しが生じた場合、がん再発の誘発や正常臓器の副作用等の問題を引き起こす。これらの悪影響について臨床をモデル化したファントムを用いて解析を行った。作成した動体ファントムは、3cmφの球形状などの模擬腫瘍を、パラメータ(振幅(<20mm)・周期(<10s))可変にてサインカーブで動かす事が出来る。また、動体ファントム筐体に空気あるいは水を封入することで、肺腫瘍および肝臓の横隔膜直下部のような軟部組織腫瘍を模擬することが出来る。さらに、筐体全体を回転させることでビーム照射方向に対する模擬腫瘍の動きを変化(<90deg.)させることが出来る。これらの単純化された、臨床上典型的な動作をする動体ファントムを4DCT撮影することで、シミュレーションの基礎データを取得した。 照射事件をシミュレートして4DCT上に線量分布を計算させるにあたり、照射線量や機器動作時間などの照射パラメータから照射スポットが時系列CT画像のどの時刻のものにたいおうするかを割り出し、それぞれの3DCT上に照射された線量分布を算出する。その後に計画時の3DCT上に線量分布の総和を算出して、実際のビーム照射実験の点線量測定と比較した。さらに、臨床上の評価として定評あるDVHなどでの線量分布評価を行った。これにより、繰り返し照射などで臨床上許容できる線量分布形成がかのうかどうかを臨床4DCTデータから評価できる。
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