我々の研究グループはこれまでに、線虫C.elegansの体の大きさが感覚情報とその下流で働くcGMP依存性タンパク質キナーゼEGL-4によって制御されていることを報告している。昨年度は新たに単離した変異体の解析からグアニル酸シクラーゼGCY-12がEGL-4の活性を制御している可能性を示唆する結果を得た。今年度は、引き続いて以下の2点において研究成果を得た。 1.グアニル酸シクラーゼgcy-12遺伝子の変異体は、感覚受容変異体の体の小ささを回復させる抑圧変異体として単離された。今回、我々はグアニル酸シクラーゼgcy-12遺伝子の過剰発現を試みたところ、野生型において体のサイズの減少が引き起こされることを見いだした。また、egl-4変異体においてはgcy-12の過剰発現の効果が見られないことから、EGL-4 cGMP依存性タンパク質キナーゼに依存して体のサイズの減少が起きていることが示された。この過剰発現実験の結果は、感覚情報がGCY-12を介してEGL-4の活性を制御することで体のサイズの調節に関わっているという我々のモデルを裏付ける。また興味深いことに、gcy-12の過剰発現は産卵異常や餌の上での個体の動きについてもegl-4変異体と逆の表現型を示すことも分かった。 2.我々は、感覚受容変異体の体の小ささを回復させる別の抑圧変異体chb-3の原因遺伝子が、GCY-12の感覚繊毛への局在に働いている新規タンパク質をコードしていることを明らかにしている。しかし、我々の抑圧変異体スクリーニングで単離されたアリルchb-3(eg52)は、変異部位の解析から完全な機能喪失型ではないことが予想されていた。今回chb-3遺伝子のコード領域を半分近く欠失した新規アリルchb-3(qj2)を作製して、表現型を解析した。この新規アリルqj2においても、eg52と同程度のGCY-12の感覚繊毛への局在異常が見られた。このことは、eg52がnullに近い機能喪失型であることとともに、CHB-3タンパク質がGCY-12の感覚繊毛への正常な局在に必要であることを改めて示した
|