研究課題
DNAが高次に折り畳まれた状態であるヘテロクロマチンは染色体の正確な分配や遺伝子の発現制御に重要である。これまでの解析から我々は分裂酵母Mcl1(Slr3)がDNA複製、姉妹染色分体の接着(sister-chromatid cohesion)に加えて、ヘテロクロマチンの維持に関与する事を見いだした。本研究ではヘテロクロマチン維持の役割に注目して解析を進め、以下の結果を得ている。分裂酵母において、セントロメア、接合型決定領域(mat)の、テロメアの領域はヘテロクロマチンを形成しており、これらの領域ではSwi6(ショウジョウバエのHP1のホモログ)が局在し、姉妹染色分体接着に必須な複合体コヒーシンもSwi6依存的にヘテロクロマチンに局在することが知られている。そこで、mcl1-101 (slr3-1)変異株におけるSwi6およびRad21(コヒーシンの構成因子の一つ)のヘテロクロマチン領域への局在をChIP法により調べたところ、予想に反してどちらも顕著な減少はみられなかった。さらに、mcl1swi6D二重変異株はそれぞれの単独変異株に比べ、より強いTBZ感受性を示すことが分かった。こうした結果から、Mcl1はSwi6非依存的にヘテロクロマチンの維持および姉妹染色分体接着に働くことが示唆された。一方、Mcl1と複合体を形成するDNAポリメラーゼαの変異株についても同様の解析を行ない、DNAポリメラーゼαはSwi6依存的および非依存的にヘテロクロマチン維持に関わることを示唆する結果を得た。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Current Genetics 48(1)
ページ: 34-43