研究概要 |
本研究では、生育温度へ植物が馴化するときのコストを定量すること、またどのATP消費過程のコストが変化するのかについて調べることが目的である。 本年度は、窒素栄養に注目し、花弁での窒素利用過程のコストの定量や発生における変化について詳細に調べ、窒素利用過程全体のコストをZerihun et al.(1998)の研究をもとに定量した。さらに硝酸還元酵素(NR)の活性測定から、窒素源が発生に伴ってどのように変化するのかを明らかにし、コストを補正した。前年同様、材料として使用しやすいペチュニアの花弁を用いた。栽培温度条件は20℃,25℃,35℃とした。タンパク質のターンオーバーのコストは、完全展開後に高くなり、特に35℃栽培の個体では、窒素利用過程全体のかなりのコストを占めていた。一方、硝酸輸送/硝酸同化のコストは完全展開前に高く、完全展開前の花弁における窒素利用全体のコストの大部分を占めた。したがって、窒素源が窒素利用過程のコストに与える影響は大きい。花弁の硝酸濃度の発生にわたる変化やin vivoのNR活性の変化から、求めた窒素利用過程コストの修正も行った。 また、シアン耐性呼吸とコストとの関係にも研究を着手した。上記同様、材料として使用しやすいペチュニアの花弁を用いた。呼吸鎖のシアン耐性呼吸経路(AOX)に電子が流れると、最大値の1/3程度しかATPが生成されない。25℃と35℃で栽培したペチュニアの花弁でのシアン耐性呼吸の最大活性の変化とAOXタンパク量の変化を測定した。結果として、どちらの生育温度でも同様の結果が得られた。
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