本年度は、コロニーの遺伝的多様性と病気に対する関係分析に用いるための創設コロニーの準備、シロアリ病原性微生物の準備、および遺伝的多様性の評価に用いるために適当なマイクロサテライトの遺伝子座を選択した。岡山県岡山市および高梁市で採集したヤマトシロアリReticulitermes speratusの有翅虫を用いて一夫一妻による有性生殖コロニー(近親交配コロニーと外交配コロニー)および二雌による単為生殖コロニーを合計200コロニー準備した。さらに、関門海峡周辺の限られた地域に分布するカンモンシロアリR.kanmonensisについても単為生殖の有無を検証するため、有翅虫を採集し、一夫一妻創設および二雌創設コロニーを準備した。また、奄美大島に生息するR.amamianusでは、雌のみのワーカー集団から補充生殖虫を分化させ、単為生殖の有無を調べたところ、この種は単為生殖能力を持たないことが判明した。また、テキサス州でR.virginicusの成熟単為生殖コロニーを初めて採集し、マイクロサテライト分析により単為生殖コロニーであることが実証された。 米国ノースカロライナ州でR.virginicusおよびR.flavipesを採集し、農林水産省より輸入禁止品輸入特別許可を得て岡山大学農学部にて飼育し、発病コロニーから病気含有土(病原土)を得た。これらの病気含有土を添加したシャーレでヤマトシロアリを飼育し、高い病原性が確認された。シロアリのワーカーが1個体ではすぐに死亡したが、複数個体ではグルーミング行動により死亡率が有意に抑制された。興味深いことに、シロアリのコロニーと病原土の組み合わせによって死亡率が有意に異なっていた。
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