今年度は、ツユクサを研究対象に用いて、開花角度(花の横向き)が訪花昆虫の行動を制御することによって送受粉効率を高めているという仮説の検証を試みた。ここでは花角度を実験的に変更することで「接近するがとりつけない」「とりつき場所が変わってしまい花粉を盗むだけで送粉に貢献しない」という送粉者行動の変化が見られたという選考研究(Ushimaru and Hyodo 2005)の結果を異なる調査地において確認し、さらに実験的に花角度を変更した花において、送粉者に自由に訪花させたあと柱頭、雄蕊の上にある花粉数を計数した。 その結果、実験花における送粉昆虫(ハナアブ)は選考研究で明らかになったのと同様の行動パターンを示し、花向きによる送粉者の行動制御がどこでも見られることが示唆された。また、開花角度を変更しなかった(横向きの)コントロール花で、実験的に角度を変えた上向きの花と下向きの花に比べて柱頭上の花粉数が多かった。また雄蕊の葯内の残存花粉数を計数したところ上向きの花で最も多くの花粉が残っていた。下向きの花では花粉残存数は少なかった。以上の結果から、上向きの花では雌(胚珠)雄(花粉)を通した適応度がコントロールより低くなることが予想され、下向きの花では雌を通した適応度が低くなることが予想される。以上から花の角度は送粉者の行動の制御を通して送粉効率に影響を与えていることが明らかになった。 また花方位の研究については、カタクリを対象とした研究を論文にまとめた。
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