今年度は、カタクリ等の林床性草本を対象として斜面上で花をどの方位に定位させるのかについて行った研究をまとめた論文がFunctional Ecologyに受理された。本論文では、「斜面上では解放空間の広がる斜面下部(斜面方位と同じ方位)に向けて花が咲く」、「花が斜面下部を向く事で植物の繁殖成功が増加する」という仮説を検証し、我々の仮説が正しい事を明らかにした論文である。 花の咲く角度に関する研究ではツユクサについて調べている花角度と訪花昆虫の行動の研究の論文化をおこなってきた。またツユクサの花上での送粉者の行動をビデオを用いた研究が上手く実行できなかった。また、ツユクサ以外の左右相称花での実験は予備的な観察をするにとどまった。 そのため、これまで発表されてきた植物-送粉者群集の研究のデータレビューを行い、それぞれの植物の花角度によって花に誘因される送粉者の機能群やその多様性がそもそも影響を受けているのかについて研究を進めた。現段階では、6つ地域の研究についてデータ入力が完了し、予備的な解析を始めたところである。この解析では、「花が上向きの花ではジェネラリスト送粉者に訪花を受け、横向き、下向きではよりスペシャリスト送粉者の訪花を受ける」という仮説の検証を行う。この仮説はこれまで、散発的に色々な論文で紹介されているが、きちんとした検証はなされておらずこの研究から仮説を検証したいと考えた。今のところ、送粉者を機能群に割り振るための基準とその多様性の指標をどのように設定するかを検討しているところできちんとした結果は得られてないが、仮説通りの傾向が多少見られるもののあまり強い傾向ではないかもしれないという感触を受けている。今後もこの解析を続ける予定である。
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