研究課題
2004-2005年に相模湾深海域の水深の異なる二地点(710m・1450m)にて採取された底性生物や堆積物などの約250試料について、有機炭素・窒素安定同位体比が分析された。微小生物群のうち底生有孔虫は各サンプリング地点の各種類ごとに数十〜数百個体が選別・収集され、種類ごとの安定同位体比測定が行われ、微小生物を含めた深海底生物についての炭素-窒素同位体食物網マップが作成された。得られた結果は以下の通りである。1)二つの地点の炭素同位体比はいずれも、ゴカイなど中・大型底生生物郡は-20〜-14‰、有孔虫などの微小生物郡は-20〜-16‰、堆積物は-21〜-20‰の値を示した。2)窒素同位体比はそれぞれ中・大型底生生物郡10〜14‰、微小生物郡6〜12‰、堆積物は4-6‰であった。3)有孔虫群集内では各種類とも窒素・炭素同位体比の双方で1-2‰の季節変動が認められたが、その傾向は種類ごとにそれぞれ異なるものであった。4)有孔虫の近縁のグロミアの一種では、主要な体組織とされる外膜部分の窒素同位体比は10-12‰となりCNマップ上ではゴカイ類とほぼ同じ部分に位置した。現在、これらの結果を解析中であり、18年度には残りの試料の分析や、必要な補足試料の採取・分析を通じ、本年度得られた結果の解析とまとめを行う予定となっている。なお、これまで有孔虫の種類別の窒素安定同位体比の測定例はないことから、本件旧で得られた深海底の底生性有孔虫の種毎の窒素安定同位体比分布は、個々の底生性有孔虫の生態系内での位置関係の解明、共生細菌を含めた深海底での物質循環系の解析、などについての有用な知見となることが期待される。
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