シロイヌナズナとイネのゲノムから配列相同性やモチーフ検索によって糖ヌクレオチドピロホスホリラーゼ様遺伝子を網羅的に抽出し、それらを配列系統樹によりサブファミリーに分類した上で組換え酵素を作成して生化学的に解析した。 シロイヌナズナとイネのゲノムから合計で33のピロホスホリラーゼ様遺伝子が抽出され、これらは11のサブファミリーに分類された。7つのサブファミリーは動物や酵母、バクテリアには存在しない機能未知のピロホスホリラーゼ遺伝子群と推定された。そのうち4つのサブファミリーはシロイヌナズナとイネで種間を越えて高度に保存されており、重要な生理機能を有することが示唆された。2つのサブファミリーについて大腸菌で組換え酵素を作成して生化学的に解析したところ、片方はUDP-糖ピロホスホリラーゼ、もう一方はGDP-フコースピロホスホリラーゼをコードしていることが明らかとなった。前者のUDP-糖ピロホスホリラーゼは様々な糖1-リン酸から各種UDP-糖を合成する活性を示し、細胞壁多糖類の代謝などで生じる様々な単糖類のリサイクルに関わっている可能性が高い。後者のGDP-フコースピロホスホリラーゼはフコース1-リン酸をGDP-フコースに変換する活性を有するが、既存のピロホスホリラーゼと配列相同性が低いことから、植物特有の性質・機能を有したピロホスホリラーゼであることが推測された。現在これら組み換え酵素をさらに生化学的に解析するとともに、プロモーターGUSによる発現部位の特定とシロイヌナズナのT-DNA挿入株を用いた生理的な解析を進めている。
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