研究課題
局所的及び葉と葉の間の傷ストレス応答に関わるシグナルとして、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)が中心的な役割を担うことが知られている。JAはオクタデカノイド経路によってリノレン酸からOPDAなどの中間産物を経て産生される。前年度までのシロイヌナズナのマイクロアレイを用いた解析から、根を傷処理し30分後に地上部で発現量が増加した遺伝子群にも、JA合成経路(オクタデカノイド経路)に関わる遺伝子やJA応答性遺伝子が多く含まれることを明らかにしていた。さらに、リノレン酸が欠損したfad3fad7fad8変異体を用いた解析によって、9遺伝子中、8遺伝子の発現応答がオクタデカノイド経路に依存することが明らかになった。さらに、オクタデカノイド経路においてOPDAからJAへの合成経路に欠損のあるopr3変異体を用いて発現解析を行った結果、opr3変異体でのZAT10の発現応答は野生株での発現応答とほぼ同じレベルであった。その他の遺伝子では、opr3変異体での発現応答は野生株に比べて明らかに減少していた。器官間傷ストレス応答において多くの遺伝子はJAに依存的であったが、ZAT10はJA非依存的であることが明らかになったことから、JAに加えてOPDAも器官間傷応答遺伝子の発現に関与していることが示唆された。実際に根を傷つけたときの地上部におけるJA量とOPDA量の経時的な変化を調べたところ、傷処理後30分にJA量が約6倍に上昇し、OPDA量は6時間後に約2倍に上昇していた。また器官間傷応答遺伝子の1つであるエチレン応答性転写因子のAtERF13について、本研究室で作製されたAtERF13 promoter-Lucifease形質転換体を用いて、地上部から根、または根から地上部への器官間での傷ストレス応答を解析した。傷処理していないコントロールに比べて、葉を傷つけた時の根では約2倍、根を傷つけた時の地上部では約5倍にルシフェラーゼ活性が上昇しており、さらに、これらの形質転換体を用いて根から葉への器官間傷応答を可視化することに成功した。
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