本研究では、C4光合成炭素代謝という特殊に分化した代謝経路の研究を通して、新規な代謝調節機構を見出すこと、そしてその特殊性・普遍性を検討することを目的に研究を行っている。こうした試みのなかで単離された新規遺伝子CP12Lのコードするタンパク質は、近年論じられている異なる酵素間での複合体形成の鍵因子であると推定された。この生化学的機能・生理学的機能を明らかにすることで、従来知られてこなかった酵素間複合体形成を介した代謝調節機構を明らかにすることができると期待される。そこで当研究では、この因子の機能の植物一般への普遍性を示す前段階として、まずこのC4光合成代謝への生化学的・生理的機能を明らかにすることを目的とし、CP12Lの結合ターゲットの同定を行った。 (1)in vitro複合体作成法により、組み換え体CP12Lを作出し、これに対して結合しうるタンパク質を、植物粗抽出液中に求めた。類似タンパク質のCP12の結合相手であるGAPDHとPRKの結合の有無を検討し、この両者が結合しうることを明らかにした。 (2)この結合条件の検討から、複合体を形成するためにはNADPが不可欠であることを明らかにした。これはNADを補因子とするCP12とは区別される。 (3)植物内(in vivo)で形成しうる複合体であるかどうか調査した。1時間の暗処理を施した植物から抽出したタンパク質に対して免疫沈降法を行い、複合体形成を確認した。 このように、生化学的特徴づけは順調に進んだが、逆遺伝学的手法を用いた生理的意義については検討が遅れている。引き続き、形質転換植物の作出を行い、検討を進めたい。
|