研究概要 |
本研究では、気孔閉鎖を誘導する植物ホルモン・アブシジン酸に応答した気孔孔辺細胞における蛋白質リン酸化反応の解析を行ってきた。まず、^<32>Pラベルしたソラマメ孔辺細胞プロトプラストにおけるアブシジン酸に応答したリン酸化反応を調べ、可溶性画分の55,50,47,19,15kDaの蛋白質とミクロゾーム膜画分の100,85,80kDaの蛋白質がアブシジン酸添加後、10分以内にリン酸化レベルが上昇することを見出した。また、可溶性画分の35kDa蛋白質は、アブシジン酸添加によりリン酸化レベルが低下した。今後は、2次元電気泳動やリン酸化蛋白質精製カラムを用いてこれら蛋白質の精製を行い、質量分析により同定を進める予定である。 一方、様々なリン酸化蛋白質と結合することが知られている14-3-3蛋白質をプローブに用いたファー・ウエスタン法によるリン酸化蛋白質の解析も行い、孔辺細胞の61kDaの可溶性蛋白質がアブシジン酸に応答してリン酸化され、14-3-3蛋白質と結合することを見出した。アブシジン酸による61kDa蛋白質のリン酸化は根や葉において見られず、孔辺細胞特異的なものであり、14-3-3蛋白質に対する抗体を用いた免疫沈降により14-3-3蛋白質と共同沈降することから、実際に孔辺細胞内で14-3-3蛋白質と結合しているものと思われる。また、アブシジン酸に応答した気孔閉鎖において2次メッセンジャーとして関与が考えられているH_2O_2は、61kDaのリン酸化には影響を与えず、61kDaのリン酸化はH_2O_2発生の上流または、別のシグナル伝達で関与していることが示唆された。さらに、61kDaの同定に向けて2次元電気泳動により解析を行ったところ、61kDa蛋白質は、等電点約5.8の単一スポットとして分離されることが明らかとなった。現在、この単一スポットをゲルより切り出し、質量分析による同定を進めている。
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