研究概要 |
キネシンおよびキネシン関連タンパク質は微小管上を動く分子モーターの一大ファミリーであり,真核細胞内におけるさまざまな小胞やオルガネラの移動を司っている.モデル高等植物として広く用いられているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノムにおいては実に61ものKRP遺伝子が存在し,各タンパク質の機能解析が精力的に進められてきている.しかしながら,高等植物には高等植物固有の機能未知KRPサブファミリーが存在し,それらのKRPの機能は未だ全く不明である.本研究は,高等植物固有のキネシンサブファミリーの一つ,MKRPタンパク質群の細胞内機能の解明を目指すものである.本年度は,シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のMKRP1,MKRP2,MKRP3に関して,遺伝子破壊株(Salk Institute T-DNA挿入株)を取得し,ミトコンドリア移行型黄色蛍光タンパク質(YFP)のカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV35S)プロモーター発現コンストラクトをこれらの遺伝子破壊株に安定導入することにより,ミトコンドリアの形態,サイズ,細胞内分布,細胞内運動におけるMKRP遺伝子群の機能を詳細に検討した.その結果,単独遺伝子の破壊体においては,子葉,本葉,葉柄,胚軸,茎,根,花弁など,観察した限りの各組織において,ミトコンドリアの形態・分布・挙動などの点で野生型との差異は見られなかった.このような結果の一因として,MKRPサブファミリーの各メンバーに機能的な冗長性(redundancy)がある可能性を考慮し,更にこれらのMKRP遺伝子に関して二重遺伝子破壊株を作出し,ミトコンドリアの観察を現在進めている.
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