研究課題
研究代表者Thermosynechococcus elongatus BP-1を材料に野生株、変異株からのPSII複合体の単離、解析を行ってきた。これまでに、His-TagによるNi affinityカラムクロマトグラフィーを用いた簡便な方法で、活性を持つPSIIを得た。蛋白質組成を確認したところ、従来の2段階クロマトグラフィーを用いた単離法と遜色ない結果が得られたため、PSII複合体の小サブユニットPSII-Zの破壊株についてもこの方法を用いて解析を行った。その結果、PSII-Z蛋白質はPSII-K蛋白質、Ycf12蛋白質のPSIIへの結合に寄与していることが明らかとなった。Ycf12蛋白質は2007年に存在が明らかになった新規PSII小サブユニット蛋白質である。PSII-Y破壊株についても同様の方法を用いて解析を行ったが、PSII-Y蛋白質はPSII-Z蛋白質とは異なり、他蛋白質のPSI1への結合には影響を与えていなかった。PSII-Y破壊株から別の方法で得たPSII複合体をX線結晶構造解析に用いた結果、世界に先駆けてPSII複合体内でのPSII-Y蛋白質の場所を特定することができた。また、光合成の詳しい解析には、機能的に重要なアミノ酸残基の改変が不可欠であるが、絶対光独立栄養であるThermosynechococcusでは活性に必須な部位の改変はできない。これまでの知見から、従属栄養的に生育できない理由は、糖を効率的に取り込めないためであると考えられる。そこで、グルコース輸送遺伝子として従属栄養での生育が可能なシアノバクテリアのSynechocystis sp. PCC 6803のglcP遺伝子を用い、従属栄養的に増殖できるThermosynechococcusの作製をおこなった結果、形質転換体が得られた。しかし、現在までのところ、従属栄養的増殖は確認できていない。
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