本年度は、GAI相互作用因子GAF1の機能解析を行った。GAF1は、塩基配列特異的なDNA結合能を有するがほとんど転写活性化能を示さない。対照的にGAIは、DNA結合能を有さないがGAL4のDNA結合領域との融合タンパク質として発現させると非常に強い転写活性化能を示す。GAF1との相互作用因子を探索した結果、GAI/RGA蛋白質のほかに、WDリピート構造を有するWDRタンパク質が単離された。WDRは、転写抑制因子とされるWDリピートタンパク質と類似していた。GAF1は、転写活性化能を有するGAIタンパク質と転写抑制因子と考えられるWDタンパク質と結合することで、転写制御を行っている可能性が考えられた。そこで、酵母の系を用いてこれらのモデルを検証した。その結果、GAF1単独では、ほとんど転写活性化能を示さないのに対し、GAIをともに発現させると強い転写活性化能を示し、対照的にWDRを発現させると、この転写活性化が抑制されることが明らかとなった。 また、E.coliで発現させた組み換えタンパク質をもちいたpull down assayを行った。その結果、GAF1におけるGAIとWDRの結合領域は、近接するが異なること。GAF1/GAI/WDの3量体を形成しうること。GAIは、GAF1に対してWDRよりも高い親和性を有することが明らかとなった。実際の植物体においてGA依存的に、GAI/RGAタンパク質が分解される事を考慮すると、GAF1は、RGA/GAIと相互作用し転写活性化因子として機能し、GAの投与によりRGA/GAIが分解されるとWDRと結合し転写が抑制されることが推察された。これらの結果をもとに、今後GAF1転写因子の標的遺伝子、植物体内におけるGAF1/GAI/WD複合体による転写制御機構を明らかにしていく。
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