植物の主要な側生器官である葉や花の形態形成に関わる新規遺伝子を単離するため、葉の形態に多面的な影響を与えるシロイヌナズナのasymmetric leaves2(as2)変異体の表現型を亢進または抑圧する変異体をスクリーニングし、その分子遺伝学的解析を行った。現在までにas2変異体をEMS処理した約2000系統についてスクリーニングした。抑圧する変異体は得られていない。亢進変異体は8系統得られた。亢進変異体は基本的に、葉が棒状になる変異体と葉の切れ込みがはげしくなる変異体、その両方の表現型がみられる変異体にわけられた。亢進変異体のうち棒状の葉となる1系統(#27)については、葉の向背軸形成に関与する新規遺伝子座であり、候補遺伝子の固定と機能解析を行った。#27変異体をas2とよく似た表現型を示すasymmetric leaves1(as1)と交配して二重変異体を作成した。as1と#27の二重変異体においても、棒状の葉を確認した。従って形態変化を引き起こす変異の原因遺伝子はAS2およびAS1と遺伝学的に相互作用することが示唆された。さらに、#27に背軸特異的なFIL::GFPを導入し、棒状の葉におけるGFPの局在を観察した結果、棒状になった葉では、FIL::GFPが全体で発現しており、向軸側の性質が失われている可能性が高い。一方、棒状の葉と切れ込みが強い系統(#30)は、すでに報告されているRDR6(RNA-dependent RNA polymerase RDR6)に変異が認められた。葉の切れ込みが著しい変異体#N7に関しては、マッピングを進めている。それ以外の変異体については、大まかな性質付けとマッピングのための交配を行った。以上の結果から、AS2遺伝子は、葉の発生分化過程初期に機能し、向背軸形成にも深く関わっていると考えられる。また、AS1とAS2遺伝子は、葉の発生分化の初期過程で幹細胞維持に機能すると考えられているclass 1 KNOX遺伝子の発現抑制に関わっており、as2変異体では、class 1 KNOXの葉における異所的発現のために、深い切れ込みがある。AS2遺伝子のclass 1 KNOX抑制の機能と向背軸形成機能の関連を明らかにできる可能性がある。
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