研究概要 |
幼苗期は光合成を開始しタンパク質合成の活発な時期であるが,この時期に葉緑体でのタンパク質分解がどのような役割を担っているのかは,未解明な部分が多く残されている.植物の葉緑体には、FtsH・DegP・SppAやClpなどの各種プロテアーゼが存在していることが判明しているが、Clpの機能は解明されていない。イネのOsClpP5遺伝子の欠損変異を持つpyl変異体は、自然栽培条件下では黄色い葉を持ち幼苗期で致死となり、その遺伝子の機能が幼苗期に必須であることを明らかにした。このpyl変異は、イネの新規DNAトランスポゾンnDartの挿入が原因であることから、nDartの脱離によって正常型に復帰した細胞をキメラ状に持つことで生存することができ、黄色の葉も生育にしたがって緑色に回復することから、生育ステージによって他の遺伝子によって機能相補されることが予想される。Race法により完全長mRNAを決定したところ、pyl変異体のOsClpP5遺伝子の転写開始点はnDartの挿入により後ろにずれ、正常なORFを取ることができないことが分かったので、pyl変異体は完全な機能欠損変異体であると思われる。そこで、イネのゲノムデーターベースの解析からアノテーションした7つのClpPホモログ遺伝子の細胞内の局在予測や機能ドメインの分析をおこない、系統関係からOsClpP5遺伝子の機能相補の可能性を評価した。これらOsClpP5ホモログのpyl変異体での発現を解析したところ、2つの遺伝子の発現が上昇していることを明らかにした。平行してOsClpP5遺伝子の発現様式を詳細に解析するためのコンストラクトを作成し、イネへ形質転換を試みた。
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