17年度は、3種の軟骨魚類(アカエイ、シュモクザメ、ツマグロザメ)の胃からのグレリンのペプチド精製、前駆体蛋白質をコードするcDNAの塩基配列の決定および単離したグレリンのアミノ酸配列決定を目標に研究を遂行した。また次年度に予定されている脂肪酸および糖鎖修飾を含む全構造の決定にも着手した。 1.アカエイのグレリン 軟骨魚類のアカエイの胃からグレリンのペプチドと前駆体蛋白質をコードするcDNAを単離した。アカエイグレリンは16アミノ酸からなり、これまでのグレリンと同様に3位のセリン残基に脂肪酸修飾が認められた。一方、これまでのグレリンで保存性の高かったN末端側7アミノ酸のうち4残基が変異していることを明らかにした。また、硬骨魚類のグレリンでみられるC末端アミド化が認められなかった。さらに、脂肪酸修飾以外に10位のセリン及び11位のスレオニンがO-糖鎖で修飾されていることがわかった。 2.サメのグレリン 軟骨魚類のサメ2種、シュモクザメおよびツマグロザメよりグレリンのペプチドを単離精製し、前駆体蛋白質をコードするcDNAを単離し、塩基配列を決定した。サメのグレリンは25アミノ酸からなり、これまでのグレリンと同様に第3位のセリン残基に脂肪酸の付加がみられた。しかし、これまでのグレリン分子で保存されているN末端側7残基のうち4残基が異なり、さらに硬骨魚類のグレリンで見られるC末端アミド化がなかった。一方、アカエイで見られた糖鎖修飾は認められなかった。 3.軟骨魚類のグレリン(総評) 3種の軟骨魚類よりグレリンを同定した。共通の特徴として、第3位のセリンに対する脂肪酸付加、これまで保存性の高かったN末端側7アミノ酸のうち4残基の変異、魚類で特徴的であったC末端のアミド化がないことがわかった。一方、相違点として、アミノ酸配列、構成アミノ酸数、糖鎖修飾の有無などが認められた。
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