17年度は、3種の軟骨魚類(アカエイ、シュモクザメ、ツマグロザメ)の胃からグレリンのペプチドを精製し、その情報を元に前駆体蛋白質をコードするcDNAの塩基配列を決定した。さらに単離したグレリンの構造決定を行った。 18年度は、アカエイのグレリンについて、天然物および合成したアカエイグレリンを用いて、グレリン様活性における脂肪酸および糖鎖修飾の意義を検討した。また、シュモクザメにおいて、グレリンをコードする遺伝子の構造解析を行った。 <アカエイグレリンの脂肪酸および糖鎖修飾の意義の検討> 16アミノ酸からなり、3位のセリン残基にオクタン酸修飾を持つアカエイグレリンと持たないグレリンを合成した。ラットのグレリン受容体(GHSR)を発現する細胞を用いて細胞内Ca上昇活性を検討したところ、オクタン酸修飾を持つアカエイグレリンは、ラットグレリンに比べ10〜100倍その活性が弱く、脂肪酸修飾を持たないグレリンは活性がないことがわかった。また、天然物のアカエイグレリンに存在する糖鎖修飾をO-グリカナーゼ処理して除去したグレリンと、糖鎖を持つ天然物のグレリンとでは、糖鎖を持つグレリンの方がやや活性が強いことがわかった。このことから、アカエイグレリンにおいて、糖鎖は活性保持のために働いていることが示唆された。 <シュモクザメのグレリン遺伝子> シュモクザメのゲノムからグレリンをコードする遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。シュモクザメのグレリン遺伝子は8541塩基対からなり、これまで報告されているグレリン遺伝子と同様に5エクソン-4イントロンで構成されていた。しかしながら、イントロンには他の動物種では見られない70塩基からなるSINE配列や51-53塩基からなるSINE様配列の繰り返しが挿入されており、遺伝子長を長くする原因と考えられた。
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