脳内に極めて広く投射して広範な脳部位で神経修飾作用を持つと考えられる終神経(TN)-GnRH系について、「TN-GnRHニューロン細胞体における自発活動が広範囲に分枝した神経突起末端での[Ca^<2+>]_i変化、ひいてはペプチド放出にいかなる影響を与えるのか、すなわち、特徴的な形態とその電気生理学的特性がペプチド放出にどう関わっているか」を明らかにするために、TN-GnRHニューロンの特徴的形態を培養下で再現し、電気生理、各種イメージング、分子生物学的手法などを有機的に融合して多面的に上記疑問に迫るという研究の着想に至った。 本年度はその第一歩として、神経突起が平面状に伸張するようにドワーフグラミー全脳スライス標本を発展してスライス培養系として確立するための培養液、培養温度、培養可能日数などの条件を検討し、終神経を含む嗅球・終脳腹側領域のスライスを5日程度まで培養することを可能にした。またTN-GnRHニューロンの単離培養系についても検討した。 培養標本における神経突起末端での[Ca^<2+>]_i変化を記録する方法としてパッチクランプ技術と電気穿孔法を応用してパッチ電極内に充填した電解質(蛍光分子、細胞内イオン濃度指示薬、プラスミドなど)を単一細胞内に導入するsingle cell electroporation法を用いることでドワーフグラミー全脳急性スライス標本中の特定のTN-GnRHニューロンに対して、FITC-dextran、Lucifier Yellow、Calcium greenなどの蛍光色素を導入する方法を確立した。 またSingle cell electroporation法により蛍光[Ca^<2+>]_i指示薬を導入したTN-GhRHニューロンにパッチクランプ法による電流固定記録を行い、TN-GnRHニューロンの発火頻度と細胞体における[Ca^<2+>]_i変化の関係を解析した。
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