脳内に極めて広く投射して広範な脳部位で神経修飾作用を持つと考えられる終神経(TN)-GnRH系について、「TN-GnRHニューロン細胞体における自発活動が広範囲に分枝した神経突起末端での細胞内Ca2+濃度変化、ひいてはペプチド放出にいかなる影響を与えるのか、すなわち、特徴的な形態とその電気生理学的特性がペプチド放出にどう関わっているか」を明らかにするために、TN-GnRHニューロンの特徴的形態を培養下で再現し、電気生理、各種イメージング、分子生物学的手法などを有機的に融合して多面的に上記疑問に迫るという研究の着想に至った。 本年度は本研究の過程で作製に成功したTN-GnRHニューロンの単離培養系について培養条件の検討を行い、成体の魚脳から微分干渉観察下で同定したTN-GnRHニューロンのみを吸引ピペットにより単離し、カバーガラス上で約2週間の培養を可能とした。同単離培養系では、培養開始後3日目から単離したTN-GnRHニューロン細胞体より成長円錐を持つ複数の神経突起の再生が起こり、また神経突起途中にバリコシティ様構造が盛んに形成される様子が観察された。 また昨年度開発したパッチクランプ技術と電気穿孔法を応用してパッチ電極内に充填した電解質(蛍光分子、細胞内イオン濃度指示薬、プラスミドなど)を単一細胞内に導入するsingle cell electroporation法を用いて培養TN-GnRHニューロンに対して、FITC-dextran、Lucifier Yellow、Calcium greenなどの蛍光色素の導入に成功した。
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