脳内に極めて広く投射して広範な脳部位で神経修飾作用を持つと考えられる終神経(TN)-GnRH系について、「TN-GnRHニューロン細胞体における自発活動が広範囲に分枝した神経突起末端での細胞内Ca^<2+>濃度変化、ひいてはペプチド放出にいかなる影響を与えるのか」を明らかにするために、TN-GnRHニューロンの特徴的形態を培養下で再現し、電気生理、各種イメージング、分子生物学的手法などを有機的に融合して多面的に上記疑問に迫るという研究の着想に至った。 本年度は昨年度培養方法を確立したTN-GnRHニューロンの単離培養系を使用して、 1.単離培養環境下におけるTN-GnRHニューロンの神経突起伸長パターン・軸索-樹状突起分化に関する形態学的解析を行い、(1)生体内における同ニューロンと同様の神経突起伸長パターンが培養環境下で再現されることや(2)軸索-樹状突起分化、(3)単離TN-GnRHニューロン同士が培養環境下で相互結合を示すことが明らかとなった。 2.また、同ニューロンの電気生理学的特性を解析したところ、(1)従来研究に用いてきた急性脳ブロック標本で観察された規則的自発発火活動が消失し、やや脱分極した状態で閾値下の膜電位振動を示すことが明らかとなった。(2)しかしながら過分極性に直流電流を通電した状態でパルス状に脱分極刺激を行うと、一過性、または持続性に活動電位が誘発された。 3.さらに、蛍光色素FM1-43による開口放出部位の標識法により、高濃度K+による脱分極刺激によって培養TN-GnRHニューロンの神経突起・細胞体の両者から開口放出が起こることが確認された。 以上の成果から、終神経GnRHニューロンばかりでなくペプチドニューロン一般の興奮-分泌連関を生理学的に解析可能な実験系を確立することに成功した。
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